『デモで怖いもの』特派員メモ「台北」(朝日新聞2008/11/12)

朝日新聞2008/11/12

 手の親指が青黒く腫れている。曲げるとかなり痛い。台湾を訪問した中国の陳雲林・海峡両岸関係協会会長に講義するデモで、群衆から飛んできたペットボトルを手で払った時に突き指してしまった。
 陳会長の泊まる台北のホテルに向かう道路を封鎖した警官隊に数百人の群衆が向き合った。完全武装の警官隊に、群衆は石や火炎瓶、ペットボトルなどを投げて対抗した。
 暗い夜道に炎が燃え上がり、緊張感がぐっと高まった時、警官隊にざわめきが走った。ガソリンよりも強く、鼻が曲がりそうなニオイが、ぷーんと漂ってきたのだ。
 だれかがペットボトルに排泄物を入れ、ふたを閉めないで次々と投げ込んでいる。警官隊も思わず後ずさりする。逃げ遅れた地元ラジオ局の若い女性記者が直撃を受け、下半身が汚物まみれに。助けてあげたくても、近づけない。みんなで遠巻きに同情した。
 近くの公衆便所で「爆弾」を製造したらしい。パキスタンなど各地で激しいデモは何度も取材したが、ある意味、こんな怖い攻撃は未体験だ。権威主義体制と長年戦った台湾民衆の知恵なのか。女性記者は「もう帰る!」と怒りに肩を震わせて立ち去った。突き指など、けがのうちにも入らないと思った。(野嶋剛)

『ざ・台湾』て感じね。
こういう強さと猥雑さって、アジア行くとあるんだよねぇ。案外、ヨーロッパとか、ありそうだよね。
日本人は、今のところ、きれい好きだから、ないと思うけど。

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